
ミシマサイコのペーパーポットによる苗づくりの試み(2025/7/18)
ミシマサイコは、春や秋といった適した気候条件下でも発芽率が50%を超えることが難しく、発芽までに日数を要するうえ、初期生育が緩慢で苗の生育も不揃いになりやすいという課題があります。特に、施設園芸や苗の供給を前提とした場合、種まき後にある程度揃ったサイズの苗を安定的に供給できる栽培技術の確立が求められます。さらに、ミシマサイコは直根性であるため、移植の際には主根を傷つけずに植え替える必要があります。そこで今回、これらの課題解決の一助として、日本甜菜製糖株式会社(ニッテン)の紙製の育苗容器ペーパーポットの活用の可能性について試験的に検討を行いました。
検討に際し、播種セットの貸与およびペーパーポット(No.2-264 (径3cm x 高さ10cm) 12列 x 22段 264本)(写真 @) サンプルの提供、播種器材の使用方法をご指導頂きましたニッテン紙筒事業部 渡部航平・小松大祐さんに感謝申し上げます。種まき用の培土は、「ミシマサイコ」栽培情報に記載のように富士砂:鹿沼土:赤玉土=1:1:1を用い、元山和男会員より頂いた2022年産豆州ミシマサイコのタネを、1穴あたり数粒毎、手播きしました。
初回は、2024/2/27-28に播種し、トレイを春北風から守るためビニル袋に包み陽当りの良い菜園に置きましたが、8/27まで発芽は見られず、廃棄しました。
次に2024/5/12に植木鉢にたっぷりのタネを播種したものと並べ、再度、ペーパーポットに播種しました。1ヶ月後、植木鉢では発芽が見られましたが、ペーパーポットでの発芽は見られませんでした(写真 A)。更に1ヶ月経過した7月初旬まで待つことにより、ペーパーポットにおいても発芽が観察されました(写真 B)。
発芽したミシマサイコは、2024年の猛暑の夏においても、ペーパーポット内で緩やかに生育し、本葉も複数枚育みました。約20株は、11月14日にプランターへ移植し、その状態で冬を越しました。残りの株は引き続きペーパーポット内で冬を越し、今春(2025/4/9)、本葉がしっかりと展開した29株を9cmポットに移植しました。
2025年も猛暑予想の中、三島市においても6/15以降、日平均気温が25℃を越え、6/17には最高気温34℃が報告されました。7月4日に気象庁から 「東海地方が梅雨明け」との発表がありました。平年より15日早い梅雨明けとなり、厳しい暑さが続く中、我々は熱中症対策に追われる毎日です。
一方で、ミシマサイコにとっては、黄色い小花が咲き始める盛夏の訪れです。年々、厳しくなる猛暑により、開花の遅れが懸念されましたが、7月12日には地植えのミシマサイコにおいて、複数の黄色い小花の開花が確認されました(写真 C左)。
プランターで育成中のミシマサイコも順調に成長しており、丈は50cm以上に達し、蕾もちらほら顔をのぞかせています(写真 C中央)。また、ポット栽培のミシマサイコについては、一部に移植定着の失敗が見られたものの、23株が苗として提供可能な状態まで育成されました(写真 C右)。
紙製の育苗容器ペーパーポット264穴にミシマサイコを播種したところ、今回の検討において、初年度に約1割、翌シーズンに約1割程度の苗ポットを調製できそうでした。本システムは、コンパクトなサイズで種まきを集約的に行える上、10cmの深さに根が紙筒の中に納まり、発芽・生育した株を紙筒ごと容易に取り外せるという点で、とても簡便で便利な方法だと感じました。ただし実際には、発芽しないまま無駄になる培養土入りの紙筒が7割以上にのぼり、ミシマサイコの発芽率の低さがあらためて課題であることが再認識されました。

箱根西麓〜豆州の土壌

2023/12/15更新!!
古くから箱根の西側、標高50m以上の斜面に広がる畑では、だいこんや馬鈴薯などの露地野菜が栽培され、昨今、箱根西麓三島野菜としてブランド化されている(“三島市ホーム > 旬産旬消> 箱根西麓三島野菜”)。約10年前に幕を閉じた大根祭りが、12月16-17日に復活(三島市谷田「みしまるかん」にて、たる漬けしたたくあんなどの販売や三島の大根が世の中に広まるきっかけとなった農兵節の演舞など)という新聞記事を拝見し、愉しみです。
箱根西麓の土壌は、本ホームページ ”「ミシマサイコ」情報”にも記載のように富士・箱根火山の火山灰(ローム)を母材とする黒ボク土壌、淡色黒ボク土壌で(三島市自然環境基礎調査報告書(平成15年3月))、根が生薬「柴胡」である「ミシマサイコ」にとっても好適土壌と考えられます。
以前、平成14年まで南伊豆町にあった厚生省の国立衛生試験所「伊豆薬用植物栽培試験場」にて1980年代頃行われた伊豆半島各所(石廊崎・天子山・浅間山(賀茂郡東伊豆町)・大室山・長者ケ原)から採取された野生「ミシマサイコ」の種の様々な生育特性情報については、本ホームページ ”「ミシマサイコ」情報”に詳細を記載しました。
捨象して概括すると、供試した範囲内では、1980年代伊豆に自生していた野生ミシマサイフの種子を採集地別に圃場及びポットで栽培し、生育・収量を検討した事例によれば、南伊豆町石廊崎系統が最も優れていたように読み取れました。
今回、1970年以前の伊豆における薬用植物の検討で、「ミシマサイコ」の生育土性の文献が入手でき、豆州/伊豆国の「ミシマサイコ」が生育した土壌についてデータを拝見できました。
限られたフィールド調査や限られたサンプリング土壌を用いた一実験例で、結論を得ることは難しいところですが、〔第2報〕のまとめは的を射ている記述と思いながら拝読しました(以下)。
「以上今回の調査だけで結論づけることは未だ不十分と思われるが, 最優良品の ミシマサイコを産する伊豆の風土感応は, 一般的にみて, 生育期間中相当湿気に富み, 高温多照を必要とするが, とくに発芽時に気温高く, 適当な降雨ある気候状態がよく, また土性については火山灰を含む「 クロボクJで, 腐植含量の多い埴壌土でしかも排水良好な微酸性土壌にもつとも品質のよい ミシマサイコが産するように思われる。」
