ミシマサイコの会

講演会開催

「ミシマサイコの会」は、「ミシマサイコ学習会」の流れを受け、毎年開催する総会時に、記念講演を演者のご協力を頂き開催して参りました。ご多忙中に貴重な講演を快く受けて戴きました講師各位には、改めて感謝を申し上げます。
本会では、引き続き、先人から伝承されるご経験・知識に加え、幅広く三島市内外の先生方からのナレッジ(knowledge)のご提供を頂きながら研鑽を積む所存です。今後とも、ミシマサイコ/Bupleurumをキーワードに多様な情報に触れあいたく、よろしくご交誼をお願い致します。

2025/2/4更新!!

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≪ 2025年「ミシマサイコの会」講演会 ≫
日時:令和7年2月2日(日) 14:00 〜 15:45
場所:三島市市民活動センター 4階(三島広小路 マックスバリュービル内)
演題:雑草を薬草にかえる やさしい方法
講師:薬剤師 鈴木 勝雄 氏
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鈴木 勝雄 氏プロフィール:1963年 沼津市生まれ。
大学は薬草を学ぼうと薬用植物学を専攻され、漢方薬についても学び、卒後、東京 - 神奈川の漢方薬局で生薬の調合ができる薬剤師として長年勤務。仕事のかたわら、生薬の陳皮に近い「橘」の存在を知り、その世界に没頭。自生地の戸田へ足しげく通い、橘のネットワーク同好会である「ときじく倶楽部」に入会。
2020年、介護の為、沼津に戻られ、2024年 “結(ゆい)たちばな” を起業および “ミシマサイコの会” 入会。
”結たちばな“ では、橘バーム「香久宮(かぐみや)」を販売。沼津市戸田地区は、古事記にも記されている日本固有の柑橘「橘」の北限自生地で、地元の有志が集まり、橘の保全活動と橘を活用したまちづくりが行われおり、その一環で橘精油を開発(橘は、非時香果(ときじくのかくのこのみ)と言われるくらい香り高き果実)。

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今回の講演では、「雑草を薬草にかえる やさしい方法」と題され、下記の12種の植物(「四季の薬草」一覧表)についてご紹介頂いた。内容は、雑学も交えながら親しみやすくわかりやすい説明で、多くの会員内外の参加者から質問が上がり盛会であった。講演の中では、実際の植物写真以外に、江戸時代の著名な本草学者 岩崎灌園(いわさき かんえん: 1786‐1842)による日本最初の本格的彩色植物図譜である『本草図譜』が掲示されると共に、実際の生薬サンプルや漢方薬が回覧で閲覧できた。

柴胡については、漢方処方に多用される重要な生薬として紹介された。風邪(ふうじゃ)の初期、太陽病期では葛根湯が常用され有用であるが、病期が長引き少陽病期においては小柴胡湯が、あるいは太陽・少陽合病期には柴胡桂枝湯が有用であることが紹介され、漢方処方において、体質的・症状的なものと病期とを合わせ使用のタイミングを見極めることが重要と再認識された。
講演の最後に、現代社会は、環境要因等、外部からの汚染に曝されており、緑の天然のクスリはそれらを排泄する力があり、日々の健康に役立て楽しみながら生きましょうというメッセージで結ばれた。


   「四 季 の 薬 草」 一 覧 表
  植物名 生薬名 利用部位 効  能 料理など
タンポポ 蒲公英 葉、根 健胃、催乳、利尿、解毒 若葉/サラダ、天ぷら 根/タンポポコーヒー、きんぴら
スミレ 紫花地丁 地上部、根 不眠症、のぼせ、関節炎、腫れ物、解毒 若葉/天ぷら、汁の実、和え物 花/サラダ、酢の物、ゼリー
ヨモギ 艾葉 若い全草、葉 高血圧、息ぎれ、神経痛、冷え症、出血 新芽/天ぷら、クルミやゴマ味噌和え、草もち、草だんご
コブシ 辛夷 花のつぼみ 鼻づまり、鼻炎、蓄膿症、頭痛  
ドクダミ 十薬、魚腥草 全草 腫れ物、痔、蓄膿症、便秘、梅毒 新芽・若葉/天ぷら、つくだ煮
ツユクサ 鴨跖草 全草 利尿、腎臓病、解熱、解毒 若芽・若葉/おひたし、汁の実 花/サラダやスープ
オオバコ 車前草、車前子 葉、種子 咳止め、痰、利尿、視力改善 若葉/天ぷら、和え物
ミシマサイコ 柴胡 解熱、消炎、肝障害、憂うつ、イライラ 乾燥葉/ハーブティー
ヤマノイモ 山薬 根茎 食欲不振、下痢、だるさ、無気力 麦とろ、山かけ、とろろそば。むかご飯
クズ 葛根、葛花 根、花 根/風邪、首肩こり、頭痛、下痢、ジンマシン 花/二日酔い 新芽/天ぷら、和え物 花/三杯酢 根/くず湯、くずきり、くずもち
クコ 枸杞子、地骨皮 果実、根皮 果実/強壮、腰膝のだるさ、視力減退 根皮/寝汗、咳、出血 若芽・若葉/天ぷら、汁の実、クコ飯 果実/お粥、スープ、炒め物、クコ酒
ジャノヒゲ 麦門冬 塊根 咳、痰、口渇、舌の乾燥、滋養強壮  

2024/2/5更新!!


「ミシマサイコの会」講演会 4年ぶりの開催!

 新型コロナウイルス感染症 「5類感染症」移行(2023/5/8)後初となる今年は4年ぶりに「ミシマサイコの会」講演会を下記のように開催することができました(これまでの講演会は、“「ミシマサイコの会」活動紹介【講演会】” をご参照下さい)。

   ・開催日  2024年2月4日(日) 14:45〜16:00
   ・場所   三島市市民活動センター 4階会議室
   ・演題   薬膳学(中医学)から考察した柴胡活用提案
   ―ミシマサイコの会員として100歳まで健康で過ごしたいあなたへー
   ・講師   薬膳料理研究家 吉野甘草 (本名:吉野道夫)
プロフィール:フランス料理料理人(元フレンチレストランオーナーシェフ)、國際中医師・國際薬膳調理師、日本漢方協会会員、ミシマサイコの会会員

吉野氏は、フランス料理料理人として1984年より伊東市にてフランス料理店を営業、 2002年より国立北京中医中薬大学日本校で中医学を学び資格取得後、主に薬膳料理研究家として活躍。現在も某製薬会社所属レシピ指導、産婦人科厨房技術指導や飲食店開業時のメニュー開発、調理技術指導等と共に薬膳講座やセミナー等において、実習・実践を重視したコンサルタントとして活動中。


 吉野氏は、2022年7月から本会に参画頂きました。今回、ミシマサイコについて、根部の生薬 ”柴胡”の漢方薬としての概要から、食養(薬膳)の立場から非医薬部分の葉からミシマサイコペーストを作製し、誰もが楽しめるオリジナル料理レシピを紹介下さいました(資料@)。加えて、資料として二十四節季の冬(立冬/小雪/大雪/冬至/小寒/大寒)向けの薬膳レシピを頂きました(資料A)。季節は立春を過ぎた本日(2/5)、今シーズン初めて都心から静岡県東部山沿いに大雪警報が出され、寒さ本番、冬の食養生をしつつ、元気にミシマサイコの芽生える春を待ちたいものです。

   ⇒“講演会 資料@”

   ⇒“講演会 資料A”



開催日演題タイトル講師(所属・役職は
講演時)
2020/2/15 伊豆の薬草とミシマサイコ
<再発見!伊豆学講座>ミシマサイコ 山野に自生した「特効薬」(東京新聞/ TOKYO Web)
NPO法人伊豆学研究会理事長、(公)江川文庫学芸員
 橋本敬之 氏
2019/2/2「薬食素材の活用事例と将来の可能性」
〜ミシマサイコの話題と夢にふれて〜
 市民活動センター 4階会議室
多田食品有限会社
代表取締役
 多田清吾 氏
2018/2/24相模原市にゆかりの深いさがみはらサイコとは?相模原柴胡の会
 福田智行 氏
2018/2/24DNAレベルからみたミシマサイコの世界国立遺伝学研究所
教授
 有田正規 氏
2017/2/11ミシマサイコ栽培と生薬調剤の実例北里大学名誉教授
 吉川孝文 氏
2016/2/20自然への招待 ミシマサイコを意識して桜美林大学名誉教授
 三島次郎 氏
2015/2/11ミシマサイコの可能性静岡県立大学薬学部教授
 野口博司 氏
2014/11/23ミシマサイコの魅力京都大学薬学研究科
 伊藤美千穂 氏
2013/5/23我が家のミシマサイコ「ミシマサイコの会」会員
 相原修 氏
2012/2/20 ミシマサイコ −生薬名「柴胡」・別名「和柴胡」(三島市立図書館所蔵 K470) 「ミシマサイコの会」顧問
 大沼倶夫 氏

【参考資料】2017年2月 ミシマサイコの葉に含まれる機能性成分に関する研究
静岡県立大学食品栄養学部 竹内綾 氏

【2020/2/15(土)】14:30〜16:00 三島市民活動センター4階会議室において「2020絶滅危惧種ミシマサイコ講演会:伊豆の薬草とミシマサイコ」と題し、NPO法人伊豆学研究会理事長、(公)江川文庫学芸員 橋本敬之先生よりご講演頂きました。上記リンクの講演資料にありますように史書に記載の伊豆の薬方および豆州産の薬草について分かり易くご紹介頂き、〆としてミシマサイコについて語られました。現在、韮山の江川文庫史料の維持・修復・保管が進行中とのこと、江戸時代の柴胡湯処方の記録や明治のウィーン万国博覧会に戸田村産サイコ2箱が出品された記録などが存在するというお話しに聴き入り、大変有意義な90分でした。橋本先生、ご参集の皆さま、ありがとうございました。



今回の講演会に参加・協賛頂きましたソレイユ(Soleil:フランス語「太陽」)菊川美幸さんから「箱根三島野菜の生姜について」と「薬膳講座及び薬草販売を目指すための交流会」(5月30日(土):残念ながら開催中止)のご紹介を頂きました。ソレイユでは、「日々の食材で体は作られる」を理念に、ジンジャー(しょうが)シロップ&フルーツジャムの手造り販売とジャム講座の講演をされているそうです。ジンジャー(しょうが)シロップを製造する過程で箱根西麓三島産のしょうがはトロミ・香りと辛味の刺激が強いと感じられているそうです。しょうがは、柴胡同様、日本薬局方に生姜(しょうきょう)・乾姜(かんきょう)と記載される生薬ですが、専らの医薬品である柴胡と異なり、薬用と並び、香辛料などの食用として世界中で繁用される馴染みやすい食材/薬材です。箱根西麓の土壌に馴化/育種(?)したしょうがが、和名『ミシマショウガ』を名乗る日がくるのでしょうか、愉しみです。

【2020/10/3(土)】星野会長が下田市民文化会館にて開催された令和2年度下田市教育委員会連続講座「南豆の歴史を後世に」: 「ウィーン万国博覧会と伊豆」高橋廣明下田市文化財保護審議会副会長の講演会を拝聴しました(YouTube配信:下記リンク貼付)。
講演資料において、江川文庫所蔵の足柄県韮山出張所に壬申(明治五年)九月にウィーン万国博覧会出展の為に集められた伊豆特産品リストが掲載されていました。「墺国(オーストリア)博覧会江差出候諸品入用高調書」と題するリストに、石膏や白石脂などの複数の鉱物生薬に加え、先の橋本敬之先生のご講演で拝聴した戸田村から柴胡2箱出品の記載が確認できました。加えて、植物生薬として下田町から鎮咳・利尿・滋養強壮・緩和作用で知られる天門冬(ユリ科クサスギカズラ)や内浦重須村から健胃・強壮作用で知られる石斛(ラン科スクナヒコノクスネ/イワグスリ)の出品が記載されていました。明治のはじめ、豆州が貴重な生薬の宝庫であった様子が伺える資料に思われました。